国際整形靴技術者連盟

日本整形靴技術協会

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抄録集Proceedings

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日本整形靴技術協会雑誌 IVOジャーナル 第二巻 抄録

膝装具装着歩行の力学的解析(健常成人)
-矢状面に着目して-
石黒圭応¹ 中山孝¹ 清水順市² 阿部薫³
1)東京工科大学 理学療法学科 (〒144-8535 東京都大田区西蒲区 5-23-22, Ishigurok@stf.teu.ac.jp)
2)東京家政大学 健康科学部開設準備室
3)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨膝関節疾患の保存療法の治療としてよく使用される軟性膝装具2種類,側方支柱付膝サポーターおよびクロスベルト付き側方支柱付膝サポーターを使用し,7名の健常成人男性を対象にその効果判定を行った.筋電計(Noraxon)を三次元動作解析装置(VICON Nexus)に同期させ,歩行時の右下肢の関節角度,関節モーメント,動作筋電図5筋(前脛骨筋,腓腹筋外側頭,内側広筋,外側広筋,大腿二頭筋),床反力3成分(左右,前後,鉛直成分)を計測した.その結果,床反力計の鉛直成分平均値において,クロスベルト付き側方支柱付膝サポーターと装具なしでの比較にて,クロスベルト付き側方支柱付膝サポーターが有意に大きくなっていた(p<0.05).その理由として,歩行時,立脚初期に行われる衝撃吸収のメカニズムが装具装着により阻害されたため,床反力鉛直成分平均値が大きくなったと考えられた.
肥満度と浮き趾の関係性
阿部真典¹ 菊池義浩¹ 阿部利行¹ 阿部汐里¹ 前川晃佑¹ 佐藤駿一¹
1)株式会社東北補装具製作所 (〒960-8153 福島市黒岩字田部屋 44-2, abe.masanori@ gmail.com)

要旨:中学生79名158足(男子47名,女子32名)に足型計測を行い,肥満度と浮き趾の関係を検討した.肥満度はローレル指数を用い,浮き趾の評価には浮き趾の評価には浮き趾スコアを用いた.女子は浮き趾群がなし群に比べ優位にローレル指数が高かった.男子も有意差が認められなかったが,浮き趾群がなし群に比べローレル指数が高かった.肥満の傾向がある方が浮き趾になりやすいことが判明した.そのため浮き趾の計測を行う場合,足の計測だけでなく肥満度も重要になると考えられた.
ヒール高別でのトップライン高さの適正値の算出方法の検討
蓮野敢¹ 黒田健斗¹ 笹本嘉朝¹ 阿部薫¹
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科(〒〒950-3198 新潟市島見町 1398, haa16024@nuhw.ac.jp)

要旨:本研究の目的は靴のトップライン設計の基準の確立を目指すことであった.今回はその基礎研究としてヒール高別の足部の実測を行い身長,足長,ヒール高の3つの説明変数を用いて,外果高,内果高を目的変数とする重回帰分析を行った.またヒール高別での外果高,内果高の単回帰式を求めた.健常弾性25名を対象とし,外果下端,内果頂点をそれぞれ0~5cmまで1cm毎にヒール高を上げて計測した.その結果,外果高は有意な重回帰式が得られたが,内果高では有意な説明変数が得られなかったため立式に至らなかった.またヒール高別での外果高,内果高の単回帰分析では共に強い相関のある単回帰式が得られた.
弾性ストッキングを着用した際の歩行中の圧力変化
伊藤菜記¹ 阿部薫¹ 笹本嘉朝¹ 松原千裕¹² 北澤友子¹ 伊藤あきみ¹²
1)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 (〒950-3198 新潟市島見町 1398, ham17001@nuhw.ac.jp) 
2)株式会社松本義肢製作所

要旨:近年,弾性ストッキングは,女性がむくみの軽減や脚をきれいに見せる目的で使用されている.そこで弾性ストッキングを着用した際の静止立位時と歩行時において,下肢最大周径部と下肢最小周径部における圧力変化を検討した.対象者は健常女子大生28名とし,弾性ストッキングを着用させ,下腿最大周径部と下腿最小周径部の圧力を測定した.静止立位時の計測時間は30秒間,歩行時は10mの歩行路を自由歩行させた.結果,下腿最大周径部と下腿最大周径部では,歩行時に比較して静止立位時の方が圧力が高値であった.これは静止時の下腿最大周径部の滑らかな曲面に面圧センサーは密着したが,歩行時は筋活動による膨隆のため静止時に比較して体表面に凹凸が生じ,面圧センサーの密着度が低下したためと考えられた.
踵部の軟部組織の圧迫による外果高と内果高の変化量の検討
黒田健斗¹ 蓮野敢¹ 笹本嘉朝¹ 阿部薫¹
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科(〒〒950-3198 新潟市島見町 1398, haa16008@nuhw.ac.jp)

要旨:本研究の目的は,踵部の軟部組織を両側から圧迫し,足底側のボリュームを増加させて歩行時の衝撃を吸収させる可能性を検討することであった.その予備実験として非荷重時での踵部両側の圧迫時と非圧迫時における踵幅の変化量と,それに伴う外果高と内果高の変化量の計測を行った.足部疾患がない健常男性20名を対象とし,裸足の状態で計測用ヒールカップを装着させ,踵部圧迫時と非圧迫時の踵幅の距離,外果高,内果高の計測を行った.その結果,踵部圧迫時と非圧迫時における踵幅の変化量の関係性には回帰分析を行い,有意な回帰式が得られた.また,踵部圧迫時と非圧迫時の外果高,内果高の変化量の計測では,非圧迫時の足長に対する比率で計算した結果,外果高は7%上昇し内果高は3%上昇したケースが多く認められた.このような結果が得られたのは,両側からの踵部圧迫によって軟部組織が下方へ移動し,外果高と内果高を押し上げたのではないかと考えられた.
Investigate the Predictive Value of Independent Variables for Structural Leg-length Discrepancy
Si-Huei Lee¹² Chi-Chun Kao¹³ Hsin-Yu Chen⁴ Chung-Tien Sui⁴ Hung-Ta Wu⁵ Kaoru Abe²
1) Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwan (No.201, Sec. 2, Shipai Rd., Beitou Dist., Taipei City 112, Taiwan ,R.O.C., lableesihuei@gmail.com)
2) Graduate School, Niigata University of Health and Welfare, Niigata, Japan
3) Institute of Brain Science, National Yang-Ming University School of Medicine, Taipei, Taiwan
4) Department of Rehabilitation and Technical Aid Center, Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwan
5) Department of Radiology, Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwan

Abstract: Structural Leg length discrepancy (SLLD) is defined as paired limbs are noticeably unequal. It is a relatively common problem ranging from 40 to 70% of the population. The validity and reliability of clinical methods showed conflicting results against radiographs. Accordingly, the purpose of this study is to develop a new rapid prediction model based on simple and easy-to-measure physiological parameters suitable for use in average clinical settings. 106 patients with SLLD and 57 participants without SLLD were recruited. Total 13 characteristic were measured. Multivariate logistic regression model was established to evaluate independent variables for SLLD. After adjusting for gender, age, body height and weight, we find iliac tilt angle, difference of knee flexion angle, and difference of calcaneal inversion or eversion as the 3 independent variables of SLLD. The combined detection of all three markers were significantly improved sensitivity and discrimination. It may provide clinicians a as a quick, low-cost, free radiation and repeatable diagnostic aid in age around 40-60 years old.
無酸素代謝閾値による最適なパンプスの靴底硬度の検討
伊藤あきみ¹² 笹本嘉朝¹ 阿部薫¹
1)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 (〒950-3198 新潟市島見町 1398, ham16001@nuhw.ac.jp) 
2)株式会社松本義肢製作所

要旨:筆者らは先行研究にて,ヒールパンプスの屈曲硬度による身体負荷の変化について報告した.屈曲硬度1.35kgfのヒールパンプスを用いた漸増負荷法による歩行計測において,無酸素性代謝値から1分を引いた時間(AT-1min)が有意(p0<0.01)に延長した.回帰分析の結果,1.35kgfと0.85kgfの間に最適な屈曲硬度が存在することが示唆された.今回さらに正確な数値を求めるため,屈曲硬度1.00kgfの条件を追加し実験を行った.呼気ガス分析の結果から,屈曲硬度1.00kgfでAT-1minに達する時間が有意(p<0.01)に延長し,身体への負荷が最小になることが確認された.また回帰分析より1.00kgfと1.35kgfの間に最適な屈曲硬度が存在することが示唆され,さらにMP部の屈曲硬度の数値帯域を狭めることができた.これは1.00kgfの屈曲硬度において,立脚終期に靴底がMP関節の屈曲に追従し撓むことにより足部を適切に保持し,靴底素材の反発弾性力が蹴り出しをサポートすることによって屈曲硬度が低い条件よりも蹴り出し時に使用される筋活動量が小さくなったためと推察した.
小児の靴サイズの選択方法について
-荷重時と非荷重時の足長・MP幅の変化について-
小川淳夫¹
1)㈱松本義肢製作所(〒485-8555 愛知県小牧市大字林210番地の3, a.ogawa@pomgs.co.jp)

要旨:小児の靴サイズの選択は非常に重要である.大き過ぎる靴を装着すると浮き趾や外反母趾の原因になる.また成長期であるため,成長を考慮したサイズを選択しなければならない.本報告では小児の動的変化が足長とMP幅に与える影響について計測,分析,解析を行った.その結果,荷重時の方が非荷重時より足長が長くなり,MP幅も広がることが確認された.また足長の左右差もあり,右に比べ左の方が若干大きくなり有意差も見られた.靴サイズを選択する場合,立位にて左右両方の足長とMP幅を計測して靴サイズを選択する必要がある.
走行時に母趾球の後方滑りを抑制する形状を具備したランニング用インソールの開発
阿部薫¹ 濱野礼奈² 北澤友子¹ 伊藤菜記¹ 笹本嘉朝¹
1)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 (〒950-3198 新潟市島見町 1398, kao-abe@nuhw.ac.jp) 
2)新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科

要旨:走行時には母趾球と母趾が最終的な蹴り出しを担当するため,靴内における母趾球の後方滑りを抑制するための特殊形状を具備したランニング用インソールを開発し,その効果検証を目的とした.検証実験は男女大学生24名を対象とし,同一の靴下を着用させ,サイズ適合した同一タイプのランニングシューズに各インソールを挿入して,描く3回ランダムに屋内走行路で最大努力50m走を行わせたときのタイムを比較した.ノーマルインソールに比較してランニング用インソールの方が平均0.04秒タイムが短縮し,両条件間において有意差(p<0.05)が認められた.ランニング用インソールを使用した場合,蹴り出し時に母趾球が凹部に入り込み,さらに内側縦アーチ部前縁を凸状にした形状が母趾球の固定性を増進させ,靴内における後方滑りを抑制したことにより,生体が発生する推進力をロスなく地面に伝えることができ走行タイムが短縮したと考えられた.
バレーボール動作のパフォーマンスを向上させるインソールの製作とその効果
篠原梨乃¹ 阿部薫¹ 北澤友子² 伊藤菜記 夏井貴人¹ 濱野礼奈³
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科 (〒950-3198 新潟市島見町 1398, haa14022@nuhw.ac.jp) 
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
3)新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科

要旨:本研究の目的は,選手の足部形状に適合およびバレーボールの競技動作を考慮したインソールを製作,使用することにより選手のパフォーマンスを向上させることであった.まずインソールに選手の足部形状および競技動作を考慮した加工を行った.インソールの仮合わせ後,約一ヶ月間の使用期間を経て,5項目のパフォーマンステストを実施した.さらにテスト終了後,選手に対してインソール使用に関するアンケートを行った.その結果,垂直跳びでは6.3%,ブロックジャンプでは5.3%,ランニングジャンプでは2.4%,反復横跳びでは3.6%,9m3往復走では4.9%のパフォーマンスの向上が認められた.アンケートの結果は,すべての項目において良好な回答が得られた.このような結果を得られたのは,製作したインソールの構造からシューズ内部での足部のずれが減少したことと,足部アライメントの改善による足部剛性・安定性が向上したため,パフォーマンスの向上へとつながったのではないかと推察した.
異なる種類の上履きを使用している幼児のアーチ形成と浮き趾の比較
永井恵子¹ 阿部薫² 笹本嘉朝²
1)くっく知多店(〒478-0065 愛知県知多市新知東町 2-23-1, kookeiko@hotmail.co.jp)
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:幼稚園等の上履きとして従来から使用されており普及率も高い足背一本ゴム付きバレーシューズタイプの上履き靴と,鼻緒付き草履において,足のアーチ形成と浮き趾の状態を比較し,幼児の足の成長にとって必要な履物を検討することを目的とした.対象は幼稚園児年長クラス(5~6歳)で,バレータイプを上履き靴としている幼稚園に在籍する39名と,草履を上履きとしている幼稚園に在籍する39名を草履群とした.フットプリントを自然立位で両足採取し,アーチ形成点数と浮き趾点数を比較した.結果,アーチ形成には有意差が認められなかったが,浮き趾に関しては草履群の方が有意に点数が高かった.草履群では足趾に関与する筋の発達を促進するため浮き趾が少なく,また足内筋をよく使用するため足底筋を発達し,土踏まずの印影が低く採取されたためアーチ形成に有意差が認められなかった可能性が考えられた.
立位および座位による足型計測値の変化量の検討
石原智光¹ 永井恵子¹ 阿部薫²
1)くっく知多店(〒478-0065 愛知県知多市新知東町 2-23-1, ishipeko@gmail.com)
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:足型計測では立位による計測が原則であるが,立位が取れない場合は座位で計測しなければならないこともある.そこで健常成人男女47名を対象に,足長,足囲,足幅,踵幅,ウェストガース,足高,外果下端について,立位および座位による足型計測値の献花料を検討したところ,すべての項目で有意差が認められ,かつ有意な回帰式が得られた.これにより座位時の計測値から立位時の値を求める早見表の作成が可能となり,靴販売の現場的にも非常に効率の良いフィッティングを行うことができると考えられた.
3Dプリンタを用いた特殊靴用ラストの製作
植松茂也
有限会社 山形義肢研究所(〒990-2332 山形県山形市飯田 5-5-39, shigeya.u@gmail.com)

要旨:3Dぷりんを用いて特殊靴用のラストを製作する方法を考察した.採型は3Dスキャナ,ラストの修正は3D-CADを用い,完成したデータは3Dプリンタにて出力した.従来の方法に比較して,実質作業時間が約3時間20分短縮した.これにより作業の効率化や製造コストの低減が見込まれ,左右の形状の調整やヒールピッチ,トウピッチなどの修正も正確に設計が可能であると考えられた.3D-CADにより画面上で簡単に修正できるが,手作業のようにラストを製作するには,ソフトの改良や操作者の教育や習熟も必要である.3Dプリンタに関しても,出力する方向や材料の選定,温度条件の設定など細かな配慮が求められるため課題も多い.しかし新しい技術や機械を用いて特殊靴を提供できるようになれば,ユーザーと供給側双方にとってメリットが多くなると推察した.
継手付き短下肢装具使用時の靴の履き口形状の工夫
~靴修理技術を応用して~
松本典子¹ 阿部薫²
1)個人事業
2)新潟医療福祉大学大学院 (〒950-3198 新潟市島見町 1398, kao-abe@nuhw.ac.jp)  

要旨:継手付き短下肢装具使用者の靴は,足継手部分が触れる履き口内側のライニングに破損を生じ,靴の寿命が短くなってしまう.これは歩行の際に履き口内側と足継手部分が常に擦れ合うことによって起こる.市販靴は短下肢装具を装着して履くことを想定して設計されていないため履きづらい.履きやすい工夫を施された靴も一部市販されてはいるが,デザインが限定され靴選びの楽しみに乏しい.そこで靴修理で使われる「袋縫い」技術の応用と改良した月形芯を作製し,市販靴に履きやすさとライニングの耐久性を付与することを目的とした.このような靴改造の工夫が修理技術者の方から医療者に向けて提案されることにより,今後,医療と修理技術が結び付き,装具使用者の目線に立ったQOL工場の一助になればと考え報告する.
高齢者施設のフットケアにおける靴の適正使用の重要性 
東海林藍¹ 川上奈美子² 大野悦子² 大場広美¹ 阿部薫³
1)フットケアセンター山形 (〒990-0067 山形市花楯 1-2-12 ロイヤルビル1階, ai_shouji@hotmail.com)
2)パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設
3)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:老人ホームなどの高齢者施設では,生活全般に関する介護を中心としたケアの提供が行われている.しかしフットケアに関するサービスの提供は必ずしも充実しているとは言えない.筆者らはフットケアを積極的に実施するなかで,特に靴の不適切な使用が原因となって足趾や爪などにトラブルを生じている例を散見したため,靴の適正使用を援助した事例を紹介する.ケース1は母趾の爪が円筒状の巻き爪状態となっており,爪が母趾先端よりも伸びていた.先端部分が靴内部に接触するため,靴を緩く履くことにより靴内で足が前滑りを呈していた.爪を扁平化させるため母趾の指腹が接触することを目的に爪切りを実施し,適切な靴使用を援助して経過観察中である.ケース2は実寸よりも大きいサイズの靴を使用し,靴内で足が前滑りすることによって足趾全体が靴のトゥ形状となり爪も変形を呈していた.フットケアを実施し適切な靴使用を援助したところ改善が認められた.