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日本整形靴技術協会雑誌 IVOジャーナル 第七巻 抄録
ヒール靴におけるヒール高変化時の踵幅の変化の検討
-3次元足形計測器を用いた解析-
蓮野敢¹ 阿部薫¹ 岡部有純² 安松美咲² 東海林藍¹
1)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398, hwd22004@nuhw.ac.jp)
2)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科
要旨:本研究ではヒール高変化時の踵幅の変化に着目して,段階的にヒール高を変化させたときの踵幅を明確にすることを目的とした.健常女子大学生12名24足を対象に,被験者の肢位は両側裸足で静止立位時の足部を3D計測した.3Dデータをもとに踵幅,内側踵幅,外側踵幅を計測し,ヒール高が0~5cmまで1cmごとに変化させたときの寸法変化を算出した.その結果,踵幅で有意な回帰式が得られたが,内側踵幅,外側踵幅では有意な回帰式は得られなかった.これによりヒール高の増加は足関節底屈の状態であるため,背側の皮膚は引張され底側の皮膚は弛緩することで,静止立位においては踵部軟部組織が内外測に均等に流動する変化となることが明らかとなった.
足型計測値からアーチインデックスを算出するための重回帰分析による検討
安松美咲¹ 阿部薫¹² 蓮野敢² 岡部有純¹
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398, raa20044@nuhw.ac.jp)
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
要旨:診療以外の場面における扁平足の診断方法として国内外で広く使用されているArch Index(AI)はX線診断と相関性が強いとされているが,面積算出のために相当の徒手的作業時間がかかることが難点である.本研究は面積によらず足型寸法かたAIを算出する重回帰式を算出し,扁平足判断の簡便性向上について検討することを目的とした.大学生を対象としてフットプリントから足型寸法とClarke's Angel(CA)を計測し,画像解析ソフトにより面積およびAIを算出した.これらの値を用いて重回帰分析を行った結果,足型寸法からAIを計算する重回帰式の決定係数は高く十分な実用性があることが示唆された.アーチ幅単体・CA単体でもAIとの強い相関が認められたが,今回のように他の説明変数と合わせて計算に用いることによって,さらにその精度が向上すると予想された.フットプリントは非侵襲的方法として有用であるが,本研究の結果より分析の簡便性をさらに高めることができると考えられた.
一本歯下駄を用いた歩行における骨盤・腰椎の運動制御に関する検討
松下和哉¹ 石黒圭応² 中山孝² 泉龍太郎³
1)青葉台たけだ整形外科 (〒227-0063 神奈川県横浜市青葉区榎が丘 1-9, h311207@gmail.com)
2)東京工科大学 理学療法学科
3)日本大学大学院 総合社会情報研究科
要旨:下駄を用いた歩行において,下駄が持つ特徴的な形状に対して人体の骨盤・腰椎および体幹の運動制御がどのように行われているのか検討するため裸足・一本歯下駄・二本歯下駄の3条件について三次元解析装置を用いて歩行を撮影し,Plug in gaitモデルと腰椎Sモデルを組み合わせて立脚期の運動学的分析を行った.結果,裸足に対して一本歯下駄で骨盤前傾角度,脊柱起立筋の筋活動において有意差を認めた(p<0.05).これは一本歯下駄を用いて歩行するうえで生じる不安定な支持基底面と重心位置の上方偏位に対して,脊柱起立筋の
筋活動を増大させ,それに伴う骨盤の前傾を行わせることで体幹の筋による身体剛性を高め,不安定な状態での安定性を得ようとする動的効果が生じ,腰椎の前弯による内的な衝撃吸収を代償していると考えられた.
若年女性における靴の重量感覚に関する検討
岡部有純¹ 阿部薫¹² 蓮野敢² 安松美咲¹ 東海林藍²
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398, raa19004@nuhw.ac.jp)
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
要旨:店頭における靴の購入プロセスとして人々は①視覚によるデザイン,②手にとった際の感覚,③実際の使用感等について無意識のうちに精査している.デザインや使用感についてはこれまでにも活発な議論がされてきたが,靴を手にとった際の重量感覚に関する研究は僅少である.今やほとんどの靴が既製品であるため,人々の靴に対する重量感覚の数値化ができれば効果的な商品計画への有用な情報になり得ると考えた.そこで本研究は靴に対する重量感覚を明らかにすることを目的に健常女子大学生21名を対象に,50gごとに重さを変えた片足150~400gまでの6足のスニーカーを手に取った際の重量感覚について調査を行った.また普段使用している同タイプの靴の重さおよび,握力との関連を検討した.その結果,思いと判断する境界の最頻値は300gであった.重いと判断した重量と普段使用している靴の重さ,握力との関連性は共に低かった.若年女性に共通した「スニーカータイプの靴はこれくらいの重さである」という普遍的な感覚が存在する可能性が示唆された.人々の感覚には年齢,性別,また靴の色,形状など様々な要素が関与するため,今後は対象者の属性を変えてさらに検討を進めていく.
神戸医療福祉専門学校三田校 整形靴科23期生と卒業生によるWheelchair Fashion Row/Paris Fashion Week Spring/Summer 2023でのファッションショー用シューズ制作協力の報告
辻野道子¹ 塩根浩之¹ 吉田昇平¹² 新井宏明³
1)神戸医療福祉専門学校三田校 整形靴科 (〒669-1313 兵庫県三田市福島 501-85, tsujino@kmw.ac.jp)
2)セントラル フットウェア サービス
3)株式会社7th Seed
要旨:2022年9月27日(火),Paris Fashion Week Spring/Summer 2023期間中にフランスのパリ日本文化館で,パリコレとしては初めてとなる車いすでのファッションショー「Wheelchair Fashion Row Project(WFR)」が開催されました.神戸医療福祉専門学校三田校整形靴科もWFRに参画し,整形靴科2年生である23期生と卒業生がショー用シューズのデザインと製作を担当させていただきました.IVO静岡大会でも展示予定ですので,実際のシューズ製作について報告いたします.
ORTHOPÄDIE SCHUH TECHNIK/IVO 世界大会に参加して
-整形靴技術の現在地 国際会議からの考察-
栗林薫¹
1)株式会社フットマインド (〒460-0013 名古屋市中区上前津 2-14-15 第一住建ビル, kuribayashi@footmind.co.jp)
要旨:いわゆる整形靴技術の中心地は世界的に見てドイツを中心としたEU地域と思われる.技術面においては近年3Dテクノロジーの導入により製造プロセスに大きな革新をもたらしている一方,人材教育面においては,その方向性や内容の変革が迫られているのではないだろうか.また世界情勢の不安定化の中で各国業界はどのような影響を受け,それに対処しようとしているのか等を見本市/学術大会/IVO代表者会議/市場調査を通じて考察し,整形靴技術の現状を検討した.
2022年度 日本整形靴技術協会研修会 報告
阪田茂宏¹
1)日本整形靴技術協会研修会委員会
要旨:新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け,中止・延期されていた日本整形靴技術協会研修会を3年ぶりに開催いたしました.「足を診る道具を使いこなす!」をテーマに9月7日(水)に東京文具共和会館で行われた研修会についてご報告いたします.
フットケアが与えるロコモティブシンドロームへの効果
水口徹¹ 八木裕子¹ 牧田ひろ子¹ 磯部奈美¹ 前川有希子²
1)静岡フットケア協会 (〒422-8002 静岡県静岡市駿河区谷田 33-8 フットファースト静岡草薙かのん店, shizuokafootcare@gmail.com)
2)山梨県立大学 人間福祉学部
要旨:【目的】高齢者にとって生活の質・生命の質を低下させ,生きがいを失うきっかけは自分自身の足で歩けなくなることといわれる.高齢者が安全な歩行を維持するためには,足部の健康が求められる.地域に暮らす高齢者を対象に,歩行維持の一助とする目的で,フットケア施術と運動器の機能を把握する取り組みを実施した.【方法】2020年10月~2021年4月のうち3回,ドイツ式フットケアとロコモ度テストを実施した.【結果】参加者には,巻き爪や鶏眼等による疼痛に耐えながら生活する者や,足趾や爪の変形のため靴の着用ができない者を把握できた.参加者8人のうち5人が2ステップテストに数値の上昇がみられた.【結論】フットケアは足の健康への意識づけを生活レベルに介入でき,地域展開することで健康寿命延伸への一助となりうる.さらに定期的なフットケア施術を受けることは足の健康を支援することに有益であり,歩行法力を維持する効果がある可能性が示唆された.
第5趾側角度と踵幅が捨て寸の変化に連動する説明モデルの作製
大沼義明¹ 森千秋²
1)ザックスオオヌマ靴店 (〒300-0043 茨城県土浦市中央 1-10-1, sachs-schuhe@outlook.jp)
2)一般社団法人日本靴育協会
要旨:靴販売の現場では対面販売であるため,靴の構造や適合に関する説明責任が伴う.靴販売員が足長などを考慮した上で最適な靴サイズの提案を行うが,顧客個人の主観との乖離があるケースを見受けることがある.靴販売員が顧客に対して,足部の3次元的な動きと捨て寸の関係の説明をするものの十分な理解に至らず,最終的に不適合な靴に満足し購入してしまうケースが大きな問題となっている.そこで本報告では,特に説明が困難である「靴サイズが適切であるにもかかわらず捨て寸が不適切に感じる状態」の原因である第5趾側角度が小さい場合と,踵幅が不適合な場合について,視覚的にわかりやすい説明モデルを作製して解説し,またそれぞれの対応方法について報告した.
足育の啓発活動は子育てに行動の変化をもたらしているか
-口座受講者の実施状況調査と今後の改善点について-
成田あす香¹² 森千秋³
1)みやざき足育センター (〒880-1303 宮崎県東諸県郡綾町南俣 312, asuka@ashiiku-miya.com)
2)特定非営利活動法人 日本足育プロジェクト協会
3)一般社団法人日本靴育協会
要旨:足に問題を抱える子どもの増加が報告され,運動量の減少や靴の不適合が指摘されている.一方で,子育てに関わる人の多くは足の健康や靴に関わる教育を受けたことがない.みやざき足育センターでは,宮崎県内の子育て支援センターや保育園・幼稚園等で,8年間に延べ4000人超へ足育講座を行ってきた.そこで本啓発活動の有用性を評価するため,講座を受講した保護者にアンケート調査を行い,受講者が講座で学んだ内容を今も実践しているか調査した.その結果,講座を受講した保護者は靴の選び方や定期的なサイズ確認,履き方などの行動習慣が身についていることが分かった.改善点として,爪の切り方についての周知不足が明らかとなった.今後の講座では靴の基礎知識に関する共有はもちろんのこと,足の構造や機能についても講座の内容を盛り込み,より有用なものとしていきたい.
「爪病変大事典」
-クラウドファンディングを使ったドイツ爪の専門書 「Das große Buch der Nagelerkrankungen」の翻訳出版-
藤井恵¹²
1)日本語出版実行委員会 (〒520-2145 滋賀県大津市大将軍3丁目 20-1 201号, nihonngo.jimukyokuggmail.com)
2)快適な靴と足 WOHLTAT
要旨:ドイツのフットケア国家資格であるポドローギン保有者のAnke Niederau(アンケ・ニーデラウ)先生が書かれたこの本は,ドイツの足学Podologie(ポドロギー)に基づいた爪に関する知識・技法,写真も多く掲載されており,とても分かりやすい本です.本の中には「靴・靴下の適合」についても書かれています.出版会社で翻訳出版ができず一度が諦めかけましたが,クラウドファンディングと多くのご支援,多くの仲間と専門の先生方のご協力で,2020年3月に日本語版「爪病変大事典」が完成しました.本ができるまでの秘話をご紹介いたします.
上履き靴の改善が進まない現状に関する考察
永井恵子¹² 多和田忍¹³ 阿部真典¹
1)内閣府認可NPO法人 WISH (〒478-0065 愛知県知多市新知東町 2-23-1, kookeiko@hotmail.co.jp)
2)くっく靴店
3)たわだリハビリクリニック
要旨:子ども靴は足長と捨て寸だけでなく成長寸も考慮しなければならないため,足長よりも大きい靴を履くことになり,靴の中で足が安定せず不適合な状態となりやすい.このため子ども靴では靴の中で足が前後左右に移動しないような固定機能が求められる.しかし現在,学校で広く用いられている上履き靴や体育館用靴は甲をゴムで押さえるタイプが多く固定機能が不十分であり,さらに踵のカウンター芯もないため踵部を十分に支えることができない.子どもたちの生活の中で上履き靴は使用時間が長く,体育館における運動にも使用するため,現状の上履き靴が本当に子どもの足に良いのかについて2013年に実験を行った.その結果,現状の上履き靴にはまだまだ改良の余地があることが示唆された.子どもの上履き靴を取り巻く現状と,これからについて考察する.