国際整形靴技術者連盟

日本整形靴技術協会

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抄録集Proceedings

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日本整形靴技術協会雑誌 IVOジャーナル 第四巻 抄録

オーダーメイドパンプス作製にいたる足型の特徴
稲岡千秋¹² 阿部薫²
1)足と靴の健康を科学するマイシューズストーリー (〒433-8017 静岡市駿河区大谷 3695-7, katsuiku@gmail.com)
2)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:近年,足と靴のトラブルを抱える女性がオーダーメイドパンプスを希望するケースが増えている.しかし実際はすべてのケースにオーダーメイドの必要はない.そこで既製品かオーダーかの境界を見極めるため実験靴を設定し,オーダーパンプス作製に至ったオーダー群と,実験靴で対応できた一般群の女性の足型を検討した.足長,足囲,足幅,踵幅を計測し,それぞれの対応ウィズにおいて,A以下を1,Eを5,4E以上を8と点数化したところ,一般群の足囲平均は 5.9(2E相当),踵幅は6.6(2E~3E 相当),オーダー群の足囲平均値は5.3(E相当),踵幅は3.7(D相当)であった.一般群は,踵幅ウィズと足囲ウィズの差異は0.7で踵幅の方がウィズは増加したが,オーダー群では5.3から3.7へ減 少した.足囲ウィズと踵幅ウィズの差異が大きいほど実験靴では対応できず,前足部と後足部のウィズ差が1.5以上減少した場合,オーダーパンプス作製の可能性が高まると考えられた.

馬尾神経損傷患者に対し知覚連動インサートを用いた一症例
植松茂也¹
1) 有限会社 山形義肢研究所 (〒990-2332 山形県山形市飯田 5-5-39,shigeya.u@gmail.com)

要旨:馬尾神経損傷患者に対し,知覚連動インサート装着前と装着して 3 か月後の効果をフットプリ
ントと歩行評価アプリにより確認した.左足のクラブフットの形態は時間が短く全て矯正することができなかったが,フットプリントでは内外側のバランス機能が改善され,歩行評価では踵離れが早く
なりリハビリテーションとの相乗効果が確認できた.右足では浮き趾が改善され,エレメントによる影響と思われる足の外がえし運動を抑制した歩行が以前よりも改善がみられた.
3次元足型計測器を用いた靴型のヒール高変化による母趾角度変化の検討
蓮野敢¹ 阿部薫² 笹本嘉朝²
1) 新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398,haa16024@nuhw.ac.jp)
2) 新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:本研究の目的は靴型設計でのヒール高の変化による足部の変化を明確にすることであった.今回はその基礎研究としてヒール高別の足部を3次元的に計測し,段階的にヒール高を0~5cmまで1cm毎に変化させたときの母趾角度の単回帰式を求めた.またヒール高0cmとヒール高1~5cmにおける母趾角度の有意差検定を行った.健常女性12名を対象とし,3Dデータ上で第2趾先端,踵点,脛側 中足点,母趾最突出部にマーカーを設定した.踵点から第2趾先端を結んだ線分を基準線,脛側中足 点から基準線に向かって引いた垂線との交点を内踏まず点とし,母趾最突出点,脛側中足点,内踏ま ず点のなす角度から,母趾角度計測手法である靴研究式にて算出した.その結果,有意な回帰式が得られず,有意差検定では3cmとの比較以外では有意差はみられなかった.このことからヒール高変化により,前足部荷重が増加し母趾の軟部組織が潰れ変形することで見かけ上の母趾外転作用となり,
また母趾外転筋の走行変化が軽度の母趾内転作用となり,この二つの作用による変化が同等であった ことが推察された.
足圧分布測定の4分割解析のパターン化の検討
伊藤菜記¹² 阿部薫¹ 北澤友子¹ 笹本 嘉朝¹
1) 新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科(〒950-3198 新潟市北区島見町 1398,hwd19001@nuhw.ac.jp)
2) 株式会社大井製作所(〒602-0084 京都府京都市上京区下長者町通新町東入)

要旨:履物と歩行の関係を解析する方法として,足圧分布測定装置Fスキャンが広く用いられている.現在,解析画面を足趾部・MP部・中足部・後足部の4分割として,解析する方法が使用されている.このとき解析者が目視的に形状や圧力のかかり方などで判断し,被験者毎に4分割の領域を設定して いるが,個々に足形寸法が異なるため,判断には相当の時間を要する.そこで分析時間の短縮化を目指し,分割領域のパターン化について検討を行った.対象は健常女子大学生20名とし,差高cmの同一タイプのハイヒール靴で 10mの歩行路を快適歩行させ,解析画面を分割後,割合(セル数)を記録し回帰分析を行った.結果,すべての領域で非常に高い決定係数が認められた.これは,足長が変化してもその形態比率は相似的であり,標準パターンとして今後の測定に適用可能であると考えられた.
本人の希望によって短下肢装具から改造靴に変更可能になった軽度片麻痺の一例
永井恵子¹ 永井洋²
1) 有限会社 KOOK 靴店(〒478-0065 愛知県知多市新知東町 2-23-1, hwd14006@nuhw.ac.jp)
2) リハビリ型デイサービス「歩きましょう」

要旨:脳卒中片麻痺者のリハビリテーションにおいて処方される下肢装具は,初期には使用されるが歩行能力が向上してくると,装具使用を嫌い使用しなくなり,自己の判断で運動靴を使用している例が散見される.下肢装具を使用せず普通靴のみでの歩行は不安定となり歩行量も減少する.筆者らは靴店に勤務しており医療従事者でないため,治療過程における補装具の変更に関与したのではなく,顧客として来店された脳卒中片麻痺者の方から靴の改造を依頼されたもので,ご本人の責任の範囲において行われた一連の靴改造のプロセスを紹介した.
歩行運動の左右差比較と前額および矢状接地角との関連性の検討
松本典子¹ 阿部薫¹ 伊藤菜記¹ 蓮野敢¹ 笹本嘉朝¹
1) 新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398,ham18002@nuhw.ac.jp)

要旨:筆者は靴修理業に従事している.業務中にヒトの使用した靴の靴底摩耗状態を目にしており,その多くに左右差があることを認識している.しかし先行研究には靴底摩耗の左右差に着目した報告は見当たらなかった.靴底摩耗の左右差には靴使用者の身体的特徴や歩行のくせが反影されており,その原因を解明することは,臨床現場でのアドバイスの一助になると考えた.そこで感圧歩行分析装置で歩幅・歩隔・1立脚期時間・1立脚期速度・ストライド長・ステップ時間を計測し,同時に接地角と摩耗の関連を検討するために矢状面と前額面からの接地角を記録した.左右足間では歩幅と1立脚期時間に有意差が認められ,矢状接地角と歩幅,矢状接地角と1立脚期速度の間に相関が認められた.上記の結果と下肢長測定値との関連性を検討した結果,身体寸法の差異を歩行運動の中で補正している可能性が示唆された.
ハイヒールにおけるヒールの位置の違いが足関節戦略に及ぼす影響
松下和哉¹ 石黒圭応² 中山孝² 早川茉那² 阿部薫³
1)西蒲田整形外科
(〒146-0094 東京都大田区東矢口 3-2-1, h311207689@edu.teu.ac.jp)
2)東京工科大学 理学療法学科

3)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科

要旨:高さ30mmのハイヒールのヒール部を削り,同様の高さの補高材を元の位置,更に元の位置から前方,あるいは後方 2.5cmの位置に取り付けた3種類のヒールを用意した.このヒールを10人の女性に履いてもらい,3次元動作分析装置にて各条件を撮影し,その評価を行った.その結果,立脚期初期から中期にかけて前方ヒールにおいて,中央ヒール,後方ヒールと比較して足関節底屈モーメントが有意に低下した.これは支点となるヒールが前方に移動することによって,床反力作用点が前方に移動するため,発生する床反力と足関節の位置が近づき,レバーアームが短くなり,それに伴ってヒールロッカー機構が短縮することで,結果として足関節底屈モーメントの低下が生じたと考えた.この結果から立脚初期から中期にかけて生じるヒールロッカー機構に対して,ヒールの位置によってその足関節戦略に影響を与えうることが示唆された.
JIS靴サイズの足囲・足幅サイズ両方から検討する高齢者の靴
東海林藍¹ 阿部薫¹ 松本典子¹ 笹本嘉朝¹
1)新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398, ham19001@nuhw.ac.jp)

要旨:高齢者の足囲サイズはEEEを中心に分布しているとの先行研究があるが,筆者の調査では足
囲サイズがEEEを超える者は3割に満たなかった.しかし実際に足囲サイズ通りの靴が適合するわけではないため,足囲ではなく足幅に注目するべきではないかと考えた.靴のサイズ選びで使用されるJISのサイズ表には足囲と足幅の表記があり,両方の基準から選出し適合サイズ検討をした.高齢者施設において多く使用されているEEサイズのバレーシューズに代表されるスリッポンタイプの靴を使用している高齢者に絞って,使用サイズと靴と足の適合の状態を確認した.調査の結果,足囲で選出したサイズがEEE以上であったのは24足中2足しかなく,足幅で選出すると8足まで増え,足幅から得られる適合サイズも考慮する必要性が示唆された.しかし足幅による
選出でもEE以下の足は存在しており,かつ靴も適合してない場合もあり,これには足の浮腫が関係しているとのではないかと考えられた.
高位ヒール捻挫の実態について
入野隆仁¹ 丸山仁司² 
石黒圭応³
1)済生会湘南平塚病院 リハビリテーション技術科
(〒254-0036 神奈川県平塚市宮松町 18-1, rihabiri@hiratsuka.saiseikai.or.jp)

2)国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
3)東京工科大学 医療保健学部 理学療法学科

要旨:変形性足関節症は,股・膝疾患患者と比較して有病率は低いが,いざ発症すると股・膝疾患に比較して,治療成績も確立されておらずADL等の予後が困難となる可能性が高い.発症原因の一つには,高位ヒール歩行中の転倒がある.ヒール部分の高い靴と運動靴使用時の受傷時の疾患の違いでは,ヒール部分の高い靴では,重篤な疾患に結びつく脱臼・捻挫等の割合が多くなっている¹.また転倒は平地に多いが,詳細について述べたものは少ない.そのため,高位ヒールによる怪我の予防を広く推進するために,その構造の特徴を明らかにし,改善の糸口を探ることが重要である.
2019年度日本整形靴技術協会研修セミナー報告
秋山裕一¹
1)日本整形靴技術協会研修委員会

要旨:日本整形靴技術協会研修委員会では毎年,整形靴技術に関する研修セミナーを開催しています.今年度のテーマは「歩行のしくみとインソールのしくみ」として,株式会社FOOT MIND代表取締役の栗林薫先生より「機能的インソールの基礎設計と応用」を,また新潟医療福祉大学大学院教授の阿部薫先生より「歩行を理解するための下肢運動機能解剖学」というテーマでご講義頂きました.最後に「靴談話 現場と研修」と題し,日頃の業務におけるアドバイスなどをお話し頂きました.
オーストラリア海外研修報告
-Pedorthic Clinic見学とオーストラリア整形靴学会に参加して-
阿部薫¹
1)新潟医療福祉大学 義肢装具自立支援学科 (〒950-3198 新潟市北区島見町 1398, kao-abe@nuhw.ac.jp)

要旨:2019年9月19〜21日に,オーストラリアのシドニー市で行われた第19回オーストラリア整形靴学会19th Annual Meeting & Pedorthic Symposium of The Pedorthic Association of Australia(PSA#19)に参加してきました.今回は Pedorthic Clinic の見学やシドニーの文教施設の訪問などを含め,新潟医療福祉大学義肢装具自立支援学科主催の海外研修として学生4名と共に見聞したことを報告します.
国際福祉機器展に参加して
大井博司¹
1)株式会社大井製作所 (〒602-8004 京都市上京区下長者町通新町東入, hwd16004@nuhw.ac.jp)

要旨:2019年9月25日(水)〜27日(金)の3日間にわたり,東京ビックサイト西・南展示ホールにて第46回国際福祉機器展(International Home Care & Rehabilitation Exhibition : HCR)が開催されました.この展示会は世界最大級の規模を誇り,アジア地域最大の福祉機器の総合展示会です.これに参加,出展しましたのでご報告致します.
ORTHOPADIE SCHUH TECHNIK に参加して
-整形靴技術の国際見本市-からの考察-
栗林薫¹
1)株式会社フットマインド (〒460-0013 名古屋市中区上前津 2-14-15 沖福ビル 1F, kuribayashi@footmind.co.jp)

要旨:整形靴技術において歴史,市場規模,技術等あらゆる面においてドイツが世界をリードしていると思われる.そのドイツを中心として近隣の各国が協調することにより,一つの分野さらには業界を形成している.その柱となっているのが,製造プロセスに欠かすことのできない各種製造設備と材料や商品等であり,一方では整形靴に携わる人材の育成及び情報提供であると思われる.これらを踏まえドイツおよび隣国の現在の状況について国際見本市の視察を通し,感じたことを報告する.